コラム

納骨堂で働くということ―それぞれ想い―

「心に応える」運営部主事・柳沼さんの場合2

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4年前、保険会社をやめて納骨堂・東京御廟で働きはじめた柳沼が、当初もっとも戸惑ったのは言葉だった。

法要、納骨、厨子、銘板、冥加金……。

「いまでは日常の業務で何気なく口にしますが、日々勉強でしたね」

たとえば、寺院では領収書を披露状と呼ぶ。あるいは、一番得意な芸や技を意味する十八番(おはこ)。ふだん使うその言葉の語源が仏教に由来すると柳沼が知ったのも、東京御廟で働いてからだ。

浄土真宗の本尊である阿弥陀如来が立てた四十八の願のうち、十八番目が念仏往生の願。念仏を称えた者は必ず救われる、生けとし生ける者すべてを救う、というもっとも優れているこの誓いが十八番の由来になったといわれている。柳沼はいう。

「東京御廟を訪れて、仏教にはじめて触れる方もいらっしゃいます。私たちが勉強して、ご住職やご僧侶たちと、お客さまの橋渡しになれればな、と考えているのです」

四十九日の法要は命日にしなくてはいけないのか。また、日にちが過ぎてから執り行っても大丈夫なのか……。そんな利用者の問いに柳沼たちは丁寧に対応している。

柳沼にとって忘れられない仕事がある。相手は高齢の女性からの問い合わせだった。

夫と先祖が眠る墓がある地方にある。けれど、高齢のために墓参りできない。東京御廟に改葬してほしいのだが、そちらですべての手続きを代行してもらえないだろうか……。

本来、東京御廟が行うことではなかったが、事情を聞いた柳沼は「なんとかしてあげたい」と思った。

ノウハウはなかった。住職や僧侶に話を聞き、書籍やインターネットで改葬の手続きを調べ、先方の寺のご住職と相談した。すべてが手探りだった。

改葬を無事に済ませて、女性から届いた感謝の手紙を読んだ柳沼はこう感じた。

東京御廟に足を運ぶ方々の思いに応えるのが、いまの自分の役割なのかな、と。

(続く)

文・奥田竜之介

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