東京御廟 町屋光明寺

コラム

海洋葬

海洋散骨のルール


「海に還る」という美しいイメージから広まってきた「海洋散骨」。海に囲まれた日本では古来から行われていましたが、1948年の「墓地、埋葬等に関する法律」が施行されて以来、ほぼ不可能となりました。その流れが変わったのは、1990年代に市民団体を中心に「自然葬を認めてほしい」という声が高まってからです。当時、墓地以外に埋葬することは死体遺棄とみなされていたのですが、法務省は「葬送を目的として節度を持って行う限り死体遺棄には当たらない」と判断し、海洋散骨を合法としました。現在は海洋散骨を行う業者と自治体や住民とのトラブルも起きていますので、その現状も踏まえて、海洋散骨をする上での注意点などを解説していきます。

海洋散骨の手順


海洋散骨を行うには、2つの方法があります。1つはご自身で手続きをする方法。もう1つは専門の業者に頼む方法です。手続きとしては、まず火葬業者にご遺体を火葬してもらい、役所で埋葬許可証を受け取ります。ここまでは自分で行う場合も依頼する場合も同じです。そこから先は、以下のように手順が分れます。

1.自分で散骨をする場合
火葬してもらったご遺骨を2mm以下に粉砕します。これは、遺骨をそのままの形で撒くと「死体遺棄罪」に抵触してしまうからで、世界共通基準の数値です。粉砕は袋に入れてハンマー等で叩く、すり鉢で擦るなどすればよいでしょう。散骨場所は、法的には自由なのですが、自治体によっては散骨を禁止していたり、漁業場、海水浴場、養殖場などの近くは営業妨害とみなされ、賠償責任を問われる場合もあります。船で沖合に出て海上で散骨するのが理想的ですが、なかなか個人で船を所有している方は少ないかと思いますので、散骨を前提に船を貸し出している業者に依頼することになります。

2.業者に依頼する場合
火葬から散骨まで一貫して行う場合と、火葬したお骨を預かり粉砕から散骨まで行う場合、粉砕のみ依頼する場合と、さまざまなコースがあります。ひとつの業者が全コースを請け負っている場合もありますし、ご自身の散骨を生前にご予約できる業者もあります。沖合に出る船では、他のご遺族と同乗となる場合がほとんどです。

●その他注意点

・既に埋葬が済んでいるご遺骨の散骨
「改葬許可証」を墓地管理者からもらい、役所に提出してからご遺骨を取り出し、粉砕します。合祀などで取り出せない場合もあるので事前に確認しましょう。

・副葬品
副葬品は、ご遺骨と同じように焼却・粉砕する必要があります。業者に依頼する場合はその施設で焼却・粉砕できるものであるかどうか、確認しましょう。

・近隣トラブル
散骨する場所によっては、近隣の住民から衛生面や縁起の感覚から苦情がくるケースがあります。

海洋散骨の費用・相場

2~50万円

墓標などの葬具や、散骨後の管理が一切不要のため、他の葬送方法と比較して費用をかなり低く抑えられます。ただし、沖に出るための船の費用は高額になることも。個人で貸切とする場合は、操縦士や案内人の人件費、ご供養する方々の乗船代、ガソリン代などに加えて、海上での葬儀代も一家族で負担することになります。

メリット・デメリット


ここでは、海洋散骨のメリット/デメリットについて、具体的に説明します。

●海洋散骨のメリット

1 費用を抑えられる
他の安価な葬送方法と比較しても、費用はかなり低額と言えます。粉骨だけ業者に依頼して散骨を自身で行えば、数万円でご供養できます。また、散骨後の維持費も一切かかりません。

2 宗派や家にしばられない
特定の宗教に入信することなく、後継者問題も考慮することなくご供養できます。それぞれ宗教の違うご夫婦、墓を守る後継ぎがいないと悩まれている方や、個々の考えを尊重してほしいと考える方にはぴったりの葬送方法です。

3 居住地との距離を考慮する必要がない
海は世界中でつながっているため、海の見えるところであればどこでもお参りができます。

4 ペットと一緒に散骨できる
業者によっては、ペットの遺骨も一緒に散骨できる場合もあります。最愛のペットに先立たれた方にとって、とても心安らぐご供養となります。

●海洋散骨のデメリット

1 故人を拝みづらい
海のどこでもお参りができるということは、裏返せば明確なお参りの目印がないということになります。古くからの和墓になじまれている方の中には、違和感を持つ方もいらっしゃいます。

2 改葬できない
ご遺骨は粉砕して散骨するため、掘り起こして改葬、ということはできません。

3 粉砕作業の心理的負担
個人で海洋散骨を行う場合ですが、神聖なものとされているご遺骨を自身で粉砕するのは、かなりの心理的負担になります。辛いと感じた場合は、無理せず業者へ依頼しましょう。

4 散骨場所によるトラブル
散骨を条例で禁止している自治体はもちろんのこと、漁業権のあるエリアや、養殖場、海水浴場など、住民感情を配慮して散骨を避けなければならないエリアがあります。自身で調べて問題がないと判断しても意外なところから苦情が出たり、業者に任せてもその業者自体がトラブルの元になっているケースもあるなど、散骨場所を選ぶのにはかなりの慎重さが必要となります。

月別アーカイブ

カテゴリー

最近の投稿