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お墓の引っ越し

お墓の引っ越し「改葬」を知る


「改葬」とは、お墓の引っ越しのことです。転居でお墓から遠ざかってしまったり、自分が旅だったあとの供養の不安などから、お墓の引っ越しを考える方は多いのではないでしょうか。とくに核家族化、少子化などで後継者がないご家庭のお墓は、将来管理費の支払いが滞り、無縁墓になってしまうなどの問題があります。ご家族が元気なうちに、残された人々や霊園、お寺にマイナスの遺産を残さないよう、お墓の将来について考えておきましょう。ここでは、お墓の引っ越しにまつわる手続きや注意点を、タイプ別に解説します。墓石の処理や、ご遺骨の移動など法的なルールも関わってきますので、しっかり予習しておきましょう。

お墓の引っ越しサンプル事例

1 改葬の計画

Aさんは、転勤で妻、子供と一緒に遠方へと引っ越すことになりました。転勤先では管理職となり、退職をしないかぎりは故郷に戻る機会はなさそうです。すでにご両親を亡くしているAさんは一人っ子のため、お墓に関することはすべて自分で行わなくてはなりません。そこで、お参りに行きやすい距離の墓地への「改葬」を考えるようになりました。Aさん一家の転居先周辺にある墓地や納骨堂を調べたところ、自宅からアクセスの良い墓地が見つかりました。そこでさっそく墓地に問い合わせをし、使用規則や永代供養料、管理料等の条件を調べます。家族会議を開き、立地や費用を伝えて承諾も得られたので、具体的に改葬の準備を進めることにしました。

【Point】
お墓の引っ越しは費用もかかりますし、長年お参りしてきたご家族の愛着など、感情的な問題もあります。ご家族でよく話し合って決めましょう。

2 永代使用料の支払いと『永代使用承諾書』の発行

新しい墓地の管理者であるお寺に連絡をし、改葬の希望を伝えたAさん。さっそく、今後お世話になる墓地の永代使用料、管理費などの支払いを済ませました。そして、先方からは『永代使用承諾書』を受け取ります。この書類を役所に提出することによって、引っ越し先の墓地がお骨の受け入れをしてくれることを役所に確認してもらえるのです。

永代使用承諾書発行料──無料~数千円

【Point】
永代使用証明書──受入証明書、墓地使用許可書、霊園使用許可書で代用もできる場合もあります。詳しくは自治体におたずねください。

3 『納骨証明書』の発行

新しい墓地と事前に行うべき手続きは済ませたので、次は今お世話になっている墓地を管理するお寺から『納骨証明書』を発行してもらいます。実際そのお墓にAさんの御先祖様が埋葬されていることを、証明してもらうのです。そのためには、埋葬されている方のお名前とAさんのお名前、墓地を管理するお寺のサインと捺印が必要となります。古くに埋葬された中にはお名前の分からない御先祖様もいましたが、お寺に確認してもらって無事に納骨証明書を受け取ることができました。

納骨証明書発行料──300~1500円

【Point】
改葬元の墓地を管理するお寺や霊園などが証明書を発行できない場合は、墓石の記載を写真に撮る、墓石の彫刻に墨を塗って写しを取るなどして、納骨されていることを証明します。霊園の経営者が倒産した場合や、管理者との関係が感情的にこじれてしまった場合など、さまざまなケースが考えられます。

4 『改葬許可証』の発行

次に必要なのは、Aさんが現在暮らしている市区町村の役所が発行する『改葬許可証』です。これは、Aさんのお墓が別の町に引っ越すということを、公的に許可してもらうための書類です。役所とのやりとりは、会社員のAさんが平日動けないため、奥様が行いました。まずは役所でもらえる『改葬許可申請書』に、埋葬する予定の方の死亡年月日、死亡時の住所・本籍地、埋葬年月日を記載します。奥様は埋葬されている方たちの戸籍を取り寄せてそれらを調べたのですが、古いお骨の中には不明な項目もあったので、その箇所は「不明」と記載しました。『改葬許可申請書』と、新しい墓地から発行してもらった永代使用証明書、そして現在の墓地から発行してもらった納骨証明書をそろえて役所に提出したのですが、奥様がお墓の名義者ではないという理由で、受け付けてもらうことはできませんでした。
翌日、奥様がAさんからの委任状を携えて役所に提出すると、ようやく『改葬許可証』を受け取ることができました。改葬許可証は、ご遺骨1体に対して1枚発行されます。Aさん一族のお墓には7体のご遺骨が埋葬されていたので、7通発行されました。

改葬許可証発行料──0~1000円×7通

【Point】
Aさんの家族が申請する場合に委任状が必要かどうかは自治体によって変わりますので、事前に問い合わせてみましょう。ほとんどの自治体で郵送での手続きが可能ですので、共働きや独居家庭でも土日祝祭日の手続きが可能です。

【Point】
なんらかの事情で、特定のご遺骨のみを移動する場合は、その御先祖様のみの手続きになります。

5 遺骨上げの手配

いよいよ、物理的な『お墓の引っ越し』作業にうつります。いまのお墓を管理するお寺に、役所から発行された改葬許可証を提示し、『遺骨上げ』をする旨を伝えました。遺骨上げとは、ご遺骨をお墓から取りだし、魂抜きをすることです。ご遺骨の取りだしは、通常石材店、魂抜きは僧侶にお願いします。石材店、僧侶、Aさん一家の3者でスケジュール調整をし、転居の日までにご遺骨を自宅に持ち帰ることができるよう、遺骨上げの日取りを設定しました。この時点で、石材店には墓石の撤去料、僧侶には離檀料を確認して、当日までに準備をしておきます。

【Point】
撤去料、離檀料の金額が高額すぎるというトラブルは、大変多いといいます。金額に関しては、事前に納得のいくまで話し合いをしましょう。石材店は通常、撤去料のあいみつを取って選ぶことができますが、お寺や霊園によっては、提携石材店以外は利用できないとするところもあります。

6 遺骨上げと墓じまいの作業

遺骨上げの当日、Aさん一家がお寺に赴くと、石材店のスタッフがカロートからご遺骨を取り出してくれました。ご遺骨は一旦お寺の待合室に預かってもらい、次は僧侶を呼んで魂抜きの儀式をしてもらいます。魂抜きをしてもらうことにより、御先祖様の魂が宿った墓石がただの石となるのです。魂抜きをした墓石は、石材店に撤去してもらいます。石材店への墓石撤去料と、僧侶の魂抜きへのお布施を渡し、Aさん一家はご遺骨を車に乗せて家へ帰りました。
移転先の墓地へ埋葬するまで、ご遺骨は自宅に保管します。Aさんがご遺骨を確認すると、1つの骨壺にヒビが入っていました。翌日、仏具店で新たな骨壺を購入し、お骨を入れ替えました。

墓石撤去料──10~15万円

遺骨上げ料──撤去料に含まれる~3万円

魂抜きお布施──1~5万円

墓石も移動する場合の運搬料──20~80万円

離檀料──0~30万円

【Point】
納骨を済ませてしまうと、以降はなかなか骨壺を確認することはありません。大きな地震の影響などで骨壺が破損したり、湿気の多いお墓でご遺骨が傷んだりするケースがあるので、この機会にしっかり確認しておきましょう。お骨が傷んでいる場合は、洗骨サービスの利用をおすすめします。

【Point】
墓石も移動したい場合は、サイズや形状が新しい墓地のルールに反しないかどうかを事前に確認しましょう。重量のある墓石の移動は思いのほか、費用がかかります。新しく墓石を購入する方が安価に済む場合もありますので、見積もりをしっかり取って確認しましょう。

7 転居先の墓地への埋葬

家族の引っ越しも終え、いよいよ新しい墓地への埋葬を行います。Aさんは墓地にご遺骨を持っていく日時を決め、新しいお寺の僧侶に魂入れの儀式をしてもらうようにお願いしました。と同時に、新たな墓石を建てるために石材店への予約も入れます。地元の石材店を知らなかったため、お寺に紹介してもらいました。
埋葬の当日お寺に行くと、すでに墓石の準備ができていました。改葬許可証をお寺に提出し、僧侶に新しい墓石への魂入れの儀式をしてもらうと、ご遺骨を納骨します。そして、石材店への料金と僧侶へのお布施を渡し終え、『改葬』に伴うすべての手続きが終了しました。

埋葬料──0~3万円×7体

魂入れお布施──1~5万円

【Point】
上記料金のほかに、戒名を新たに付けることを勧められる場合があります。その場合、戒名料が別途かかります。また、事務手数料がかかる場合もあります。

【Point】
専門の行政書士や霊園などこれらの手順すべてを代行してくれる業者もあります。

その他の改葬

お寺間以外の改葬について、ご説明します。

1)お寺の墓地⇔自然葬
お寺の墓地から自然葬へ改葬する場合も、お寺からお寺への改装手順とほぼ同様です。特に樹木葬の場合は新たな墓石の用意が(場合によっては魂入れの儀式も)不要になるだけで、まったく同じ手順となります。また、散骨への改葬は法的な改葬手続きは不要とされていますが、自治体によっては届け出が必要な場合がありますので、問い合わせてから実行に移しましょう。
自然葬で埋葬されたご遺骨は、合祀でない場合はお寺の墓地からの手続きとほぼ同様です。合祀されていたり、散骨されたお骨は、お骨の回収ができませんので改葬は不可能です。

2)お寺の墓地⇔公営霊園
お寺の墓地から公営霊園へ改葬する場合は、公営霊園の抽選結果待ちになります。自治体によっては当選するまで数年待たされる場合もありますので、新しい墓地を確保できてからお寺に改葬の連絡を入れるようにしましょう。公営霊園からお寺の墓地に改葬する場合、檀家として改宗が必要になる場合があります。また、魂入れの儀式等の際のお布施や、再び改葬する場合の離檀料についても考慮に入れましょう。

3)分骨
納骨している骨壺の中の一部を別のお墓へ移す場合も、改葬手続きが必要となります。手順はほぼ同様ですが、元のお墓がなくなるわけではないので、魂抜きや撤去の作業と費用が不要となります。


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